空想にモウソウ mimic wood owls

一枚の写真からのインスピレーションで、好き勝手文章を書きます。自由過ぎてすみません。※全てフィクションです。

この世の果ての案内人

『この世の果てに案内します。』 わたしはこの如何わしい広告に、何故か惹かれてしまった。4、5回躊躇ったが、結局電話してみようと思い、連絡してみた。電話先の男の人の声は柔らかく、わたしは一瞬にして心を掴まれてしまった。この世の果てに行くのだから…

猿のことわりから外れた猿。

わたしの趣味は木の枝を見て、樹齢を予測することだ。 中々、渋い趣味だとは自分でも思う。周りの猿たちがそこら中で縄張り争いや女猿をナンパしているが、わたしは少し猿のことわりからは外れた存在なのかもしれない。木の枝を見る方がよっぽど面白い。最近…

次元の狭間の女の子

あなたにはわたしが現実に見える? それとも、絵に見える? わたしは結局、そういう抽象的な存在なのよ。 あなたが絵だと思えば、絵に溶け込むし、現実だと思えば、今にも動き出してあげるし。 いわばわたしはあなたが思うことを具現化させる存在なのよ。わ…

最後の人間

人は死に絶えた。 でも、偉いもんで街灯はその役目を果たし続けていた。人間が何でもかんでも自動化を推し進めた結果、街の電灯や時計塔の時計、自動販売機などは自分自身でエネルギーをやり繰りしながら、仕事を続けている。まるで、いつまでも帰ってこない…

カカシ達のジレンマ

深夜3時、カカシ達は蠢きだす。 カカシである目的を完遂するため、日夜彼らはトレーニングを欠かさない。天敵であるカラスを追い払うための肉体改造を夜行っているのだ。そのトレーニングは過酷を極める。その様子には、天敵のカラスもドン引くほどのものだ…

キスがしたい。

私はこの私達を創った彫刻家を怨む。 なぜ、キスさせてくれなかったのか。我々銅像は言わずもがな一ミリ足りとも動くことは出来ないのに、何故キスの一秒前の瞬間を切り取ってしまったのか。彫刻家に言わせれば、この瞬間こそが芸術とのたまうのかもしれない…

死に際の音楽

私は今日死ぬ。 それは直感というよりは運命に近い感覚。身体中の細胞が死への準備を始めていて、全身が際立って感じられる。普段は聞こえない雑草が風に煽られて擦れる音や、コオロギが餌を求めて、砂利道を闊歩する音も聞こえる。遠くの音を拾おうと思えば…

簡単なことと人生

オレンジを均等にカットし、それに砂をまぶした上で、上から体重をかけて圧縮する。 基本、工場での業務はこれで終わり。私は早10年この仕事に従事するベテラン工員だが、未だにこのオレンジがどのような社会的活動に繋がっているのか知らない。工場の人間は…

宝石の国のおじさん

ビンを擦ると、小さなおじさんが出てきた。 おじさんは大あくびをかました後に、その場に横になった。そして、首でテレビを付けろと私に促してきた。アラビアの魔神を想像した私の想像力を返してくれと言いたかったが、そうしている間にも、おじさんは我がも…

桃源郷

少年は桃源郷を探しに旅に出た。 少年にとっての桃源郷とは、古びた倉庫の奥底に眠っていた一冊の本に由来するものである。その本には桃源郷への行き方が記されていたが、その行き方はずいぶんと大雑把なもので、信憑性に足るものではなかった。しかし、少年…

赤首の鳥

木のみを食べた後、私の首元は真っ赤に滲む。そう私は不器用で木のみを食べる時、必ず木のみの汁が自分にかかってしまうのである。そんな鈍臭い特性から仲間たちからは『汚れダルマ』と呼ばれてしまっている。しかも、この体たらくは雌から見てもマイナスに…

未開の工場

工場から立ち昇る煙が山間の村を覆っている。 この煙は村の人達の了承を得る事なく撒き散らされている。それどころか、村の人達は工場が出来ることすら、知らされていなかった。工場が建設される様子を見た村人はおらず、突如として現れた大きな工場の存在に…

球体

この球体には生命が住まう。 この球体にはどんなものだって入れられる。植物や家具、生き物、人間だって入れられる。球体に入る物体は、100分の1の大きさになって吸い込まれていく。しかし、吸い込まれた結果、人間であってもそこが現実世界だと思って疑わな…

地球のヘタ

私が地球のヘタだ。 といっても、到底信じてはもらえまい。 地球は私が神により植林されてから、始まった。私は地球内部にあるという溶岩を堰き止めている。詳しい実態は、あまり知らないが、根が温かさを感じるのは、その溶岩とやらのせいだと実感している…

虫たちのダンスホール

時は午前0時。 今日も水辺に住まう虫たちがそれぞれの色を携えて、特別なステージに集まってくる。お客が照明の役目を担い、羽を擦り合わせて各々が音楽を奏でるため、ミラーボールや音響設備は必要ない。そんな物よりもっと幻想的な光景がそこには広がって…

傘のきもち

今日、私は置いていかれたのだ。 私はこの世に生まれついた瞬間から、人を雨から守るという使命を仰せつかった。そして、人間に尽くし尽くしてきた。それなのに、この仕打ちはなんだ。たしかに、ビニールボディーに身を包んだのは失敗だったと思う。人は安価…

年末年始の病院の過酷さ

新年が明けた 元々、今日という日を迎えるのは、実家になる予定だったが、嫁が胃腸風邪になったため、こちらに留まることとなった。 嫁の体温がみるみる上がり、38度に達した時は、インフルかと思ったが幸い胃腸風邪だった。 インフルなら、会社を休んで仕事…