空想にモウソウ mimic wood owls

一枚の写真からのインスピレーションで、好き勝手文章を書きます。自由過ぎてすみません。※全てフィクションです。

宝石の国のおじさん

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ビンを擦ると、小さなおじさんが出てきた。

 

おじさんは大あくびをかました後に、その場に横になった。そして、首でテレビを付けろと私に促してきた。アラビアの魔神を想像した私の想像力を返してくれと言いたかったが、そうしている間にも、おじさんは我がもの顔で私の家の居間に居座った。私がこのおじさんには何も期待は出来ないと思った矢先、おじさんが大きなオナラをした。音を聞く限りではかなり臭そうなオナラだったが、意外にも匂いはほとんどなかった。臭くないと本当に臭くないのか確かめたくなるものだ。少しずつおじさんのお尻の辺りに近づいていく。匂いはやはりなかったが、代わりにおじさんのお尻付近に煌めき輝く塊を見つけた。恐る恐る手に取ってみると、それは紛れもないサファイアであった。私はおじさんの目を盗みサファイアをこっそりポケットにしまった。おじさんはまだテレビを見ている。そうこうしていると、おじさんのお腹の中から、空腹であることを告げるけたたましい音が聴こえてきた。その音と共におじさんはこちらへ目配せをする。おそらく何か食べ物を買ってこいという目線なのであろう。なんたる生意気な態度だろうと憤慨しかけるが、サファイアを手にした私に今は、それ程の怒りはなかった。大人しくパシられてやろうという気になる。私はポテトチップスとビールを持ってきておじさんに与えた。おじさんは余程空腹だったのか、そのポテチを5分ほどで平らげた。そして、爪楊枝を使って器用にポテチをほじくり出しては口に運んでいた。やっぱり見ればみるほど唯の親父である。そんな唯の親父は腹がいっぱいになったからかイビキをかきながら寝だした。せめて布団くらい掛けてやろうという気になり、またおじさんに近づく、すると先程使っていた爪楊枝の先にルビーのカケラがくっ付いていた。私はそのルビーをまたポケットにこそっとしまった。おじさんは宝石の国から来たのだろうかと、もはや何の脈絡もないことを考えてしまう。

 

翌日、おじさんが眠っていた場所を見に行くと、おじさんの形をしたダイヤモンドが煌めいていた。